Civil 3Dは、BIM/CIM対応ソフトのひとつです。BIM/CIM活用にCivil 3Dを検討されている方向けに、Civil 3Dの基本から導入コスト、Civil 3Dでできる7つのこと、実際の活用事例まで紹介します。 

正確な位置情報を持つ3次元の地形モデルの作成や、構造物の作成・解析ができるCivil 3Dについて、BIM/CIM活用業務でどのように活用できるのか、具体例とともにみていきましょう。 

Civil 3Dとは 

Civil 3Dとは 

Autodesk社が提供しているCADソフトの中で、土木設計向けのソフトがAutodesk Civil 3D(以下Civil 3Dという)です。他のソフトと比較すると、AutoCAD LTは2次元のみ、AutoCADは3次元も使用可能ですが、Civil 3Dは3次元に加えて土木設計で良く用いられるツールが加わっています。 

3次元ソフトと聞くと操作方法が独特で敬遠されるかもしれませんが、Civil 3DはAutoCADを基にソフト開発されているため、画面構成はAutoCADとほぼ同様です。そのためAutoCADやAutoCAD LTを使用して図面作成を行ってきたユーザーは違和感なくCivil 3Dを使用することができるでしょう。  

そもそもCivil 3DはBIM/CIM対応ソフトの1つです。BIM/CIM(Building / Construction Information Modeling, Management)は計画・設計段階から3次元モデルを導入し、その後の施工・維持管理段階においても情報を充実させながらこれを活用することで、一連の建設生産・管理システムを効率化・高度化することを目的としており、近年さらにその取組が加速しています。 

これからご紹介するCivil 3Dを適切に活用すれば、様々な情報が集約された価値のあるBIM/CIMモデルが作成でき、効率的な設計・施工・維持管理に活用することができるでしょう。

Civil 3Dでできる7つのこと 

Civil 3Dは土木設計の中でも、道路や河川といった線形を有する施設の計画・設計や、切土・盛土量のバランス調整・地盤高さを設定する必要がある造成設計などで特に便利になる機能を有しています。 

一方で排水施設の断面計算などは基本機能で行うことができませんが、追加のアドオンを組み合わせることで計算可能です。 

ここでは基本機能や他ソフトとの連携といった観点からCivil 3Dでできる7つのことをご紹介します。 

 現況の3次元地形モデル(サーフェス)の作成 

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Civil 3Dによる3次元の現況地形(サーフェス)モデルの作成
株式会社Malme作成

さまざまなデータから3次元の現況地形モデルを作成できます。 

たとえば、座標値データ(XYZ座標を持つtxt、csvデータ)や点群データ、2次元図面の等高線、DEMデータ(基盤地図情報の数値標高モデル)などから3次元地形モデルを作成可能です。 

さらにオルソ画像を重ね合わせることで(ドレープ)、空撮画像を3次化したようなモデルが作成できます。 

平面線形と3次元地形モデルの重ね合わせによる縦断図の効率的な作成 

道路や河川の平面線形はAutoCADと同様に2次元で作成可能です。さらに、Civil 3Dでは、計画箇所周辺の3次元地形モデルをもとに、平面線形ツールで道路や河川のルートを作成するため、簡易かつ効率的に縦断線形の計画を行うことができます。 

従来の2次元図面が成果物として必要な場合は、Civil 3Dでは縦断ビュー(縦断図)を自動的に書き出すことが可能です。 

アセンブリを活用したコリドーサーフェスモデルの作成 

Civil 3Dでは、既にソフト上に準備されているパーツを組み合わせて効率よく三次元モデルを作成することができます。 効率的に三次元モデルを作成する際に重要なのが、アセンブリの作成です。アセンブリとは標準断面図のようなもので、サブアセンブリを組み合わせることでアセンブリモデルが完成します。 

Civil3D上で、平面線形作成、縦断線形作成、アセンブリ作成を行うことで、3次元道路モデル(コリドー)が出来上がります。 

また横断ビュー(横断図)の作成は、3次元地形モデルに平面・縦断線形と測点を入力しておけば、一括で書き出すことができます。これまでのように測点ごとに横断図を作成する必要がありませんし、平面・縦断線形が変更となっても、その修正の手間は最小限となるでしょう。 

土量の算出 

civil3d-Calculating soil cut and fill
Civil 3Dによる土量の算出
株式会社Malme作成

Civil 3Dでは、現況地盤と計画地盤のサーフェス(面)の標高差から容易に土量を算出することができます。 

日本では従来、道路や鉄道などの線土工の土量計算には、「平均断面法」が用いられてきました。この平均断面法では、2つの測点の断面積と2点間の距離を用いて切土量、盛土量を算出します。 

Civil 3Dでは、「複合法」と呼ばれる独自の方法で、土量算出ができます。 

「土木工事数量算出要領」(国総研)では、BIM/CIM モデルによる数量算出(土構造物)の算出方法として、「点高法」、「TIN 分割を用いて求積する方法」、「プリズモイダル法」と「その他算出結果を確認できるもの」が示されてます。
Civil 3D の機能で算出される土量は、『土木工事数量算出要領』の「プリズモイダル法」 の値として利用することができます。 

グレーディング機能等による造成面設定の効率化 

道路設計や造成設計において、特に山間地などでは切り盛りの土量バランスが取れるよう道路高さや造成面を設定する必要があり、複数案の設定高で土量を計算・比較しながら設計することと思います。 

Civil 3Dでは法面を自動作図するグレーディング機能や上述した土量計算機能により、切り盛りバランスが取れる造成高さを瞬時に設定することができ、設計期間を短縮することが可能です。 

ソリッドモデルやメッシュモデルの作成 

Civil3dは地形モデル作成ではなく、もともとautodeskに搭載されているソリッドモデル・サーフェス・メッシュモデル作成機能も充実しています。 

CADに慣れている方は、ポリラインから3Dソリッドモデルの作成やメッシュモデルの作成も可能です。 

RevitやInfraWorksなどの他のソフトとの連携 

Civil 3Dとnavisworksを連携したモデル
株式会社Malme作成
civil3d-linking with navisworks2
Civil 3Dとnavisworksを連携した統合モデル
株式会社Malme作成

建築や構造物のモデリングに長けているRevitや、3次元モデルを意匠性高く作成できるInfraWorksとは、同じAutodesk社製のため互換性が高く、データのやり取りや統合モデルを作成することが可能です。 

さらに、Esri製品であるArcGISともデータ連携することが可能で、shpファイルを直接取り込むことも可能です。 

ただしRevitと連携する場合は、Civil 3Dと測量情報を整合させるためのShared Reference Pointといった無料のアドインを使用することや、InfraWorksとは座標系を整合させる必要があることに注意しておきましょう。 

Civil 3D導入の基本情報

Civil 3Dの導入コスト 

Civil 3Dは現在、サブスクリプションにて月単位又は年単位にて購入することが可能です。1ヶ月契約は50,600円、1年契約では408,100円、3年契約では1,102,200円であり、長期間Civil 3Dを使用する見込みがある場合は3年契約とするとお得となります。 

現在はサブスクリプションでのみ購入が可能で、買い切りはできません。なお契約前に試用したい方は、体験版で操作性などを確かめると良いでしょう。体験版はサブスクリプションでの購入版とほとんど同じ性能で、30日間使用することができます。 

なおRevitやInfraWorksなど他のソフトも同様に導入する場合、複数のソフトがパッケージとなっているAEC Collectionを検討されることをおすすめします。複数のソフトを個別に契約するよりも、AEC Collectionで1年契約の場合は1,254,000円も安価となるようです。 

使用環境、日本仕様ダウンロードなどの注意点 

Civil 3DはAutoCADなどと同じ操作感とは言え、3次元モデルを扱うことから、パソコンの動作環境はある程度整えておく必要があります。具体的な動作環境はAutodesk社のHPに掲載されておりますが、Windowsのみに対応していることや、16GB以上のメモリなどが推奨されていることに注意しましょう。 

実際に8GBのメモリのPCではやや動作が遅いことがありましたから、導入する前にパソコンのスペックを確認しておくと良いと思います。 

「Autodesk Civil 3D の動作環境」 
URL:https://knowledge.autodesk.com/ja/support/civil-3d/learn-explore/caas/sfdcarticles/sfdcarticles/JPN/System-requirements-for-AutoCAD-Civil-3D.html 

Civil 3Dをインストールしたら、「日本仕様プログラム」もAUTODESK APP STOREからダウンロード・インストールしましょう。これで日本で一般的な図面のテンプレートやツールを使用することができます。 

ただしこのプログラムはサブスクリプションでの購入版のみダウンロード可能であり、体験版は使用することができません。 

Civil 3Dの使い方 

Civil 3Dを学習するための教材には、Web上の無料動画・テキストを使用する方法と、参考書を購入する方法があります。Web上の教材はわかりやすく基本操作を学習できますし、参考書では基本操作に加えて細かなスキルを学ぶことができますから、目的や熟練度によって使い分けると良いでしょう。以下に代表的な教材をご紹介します。 

Civil 3Dの初級者向け教材 

BIM Design 土木・インフラ向け 

BIM Design 土木・インフラ向け 
図 「BIM Design 土木・インフラ向け」ウェブサイト画面
出典: 「BIM Design 土木・インフラ向け」(Autodesk, Inc.)

Autodesk社が運営するWebサイト「BIM Design 土木・インフラ向け」のおすすめポイントは、トレーニング教材の動画とテキストを無料でダウンロード可能なことです。初めてCivil 3Dを操作する方のために、基本的な操作手順や2次元図面から3次元モデルを作成する方法、平面・縦断線形の作図や土量算出の方法などといった基礎を学ぶことができます。 

動画とテキストに加えて、学習に必要なデータも合わせてダウンロードが可能ですから、わざわざデータを社内などで用意する必要も無く、すぐに学び始めることが可能です。 

「BIM Design 土木・インフラ向け」(Autodesk, Inc.) 
 URL: http://bim-design.com/infra/training/civil3d.html 

Civil 3Dの実務者向け動画 

CAD Japan.com 

図 「CAD Japan.com」ウェブサイト画面
出典:「CAD Japan.com」(株式会社大塚商会)

大塚商会が運営するWebサイト「CAD Japan.com」では動画教材が掲載されており、無料で閲覧可能です。どの動画も5分以内とコンパクトにまとまっているため、短時間で必要な事項を学習することができます。 

動画の内容は3次元地形モデルの作成方法といった基礎的な内容から、InfraWorksとの連携といった内容もあります。ただし「BIM Design 土木・インフラ向け」と異なりテキストが無く、音声の無い動画も多いため、基本的な操作はできる中級者向けの教材と言えるでしょう。 

「CAD Japan.com」(株式会社大塚商会)
 URL:https://www.cadjapan.com/movie/matome/operate_autocad_civil_3d.html 

malme | BIM/CIM 

malme-youtube
図 「malme|BIM/CIM」Youtubeチャンネル画面
出典:「malme|BIM/CIM」(株式会社Malme)

YouTube上のチャンネル「malme | BIM/CIM」はmalme社の公式チャンネルであり、こちらも無料で教材を閲覧可能です。 

内容は、土木設計に関する基礎を学習する他の教材とはやや異なり、立体のモデリングを行う際の基本操作を学習することができますから、擁壁などの構造物の構造図・詳細図を作成する際に役立つでしょう。動画には音声も付いており、特別なデータをダウンロードする必要もありませんから、すぐに学習を始めることが可能です。 

「malme | BIM/CIM」 
 URL: https://www.youtube.com/channel/UCICWKHeI7MCZ2QhUA_v2GBQ 

Civil 3D独学者向け参考書・テキスト 

「これからCIMをはじめる人のためのAutoCAD Civil 3D入門」 

今回ご紹介する3冊の参考書のうち、最も初学者向けなのがこの書籍です。この1冊を読破すれば、3次元地形モデルや平面・縦断線形、グレーディングの作成方法や土量の算出方法といった基礎的な操作手順を習得することができるでしょう。学習に必要な教材データは無料でダウンロードすることが可能です。 

Civil 3D 2018を用いて書籍の内容は解説されていますから、最新版であるCivil 3D 2021とは画面構成がやや異なることがある点に注意しましょう。 

「これからCIMをはじめる人のためのAutoCAD Civil 3D入門」(2017、エクスナレッジ) 
 URL: https://www.amazon.co.jp/dp/4767823463

「Civil 3DをBIM/CIMでフル活用するための65の方法」 

上述した「これからCIMをはじめる人のためのAutoCAD Civil 3D入門」をさらに細かく解説し、かつCivil 3D 2021にも対応したのがこの書籍です。使用する教材データも同様に無料でダウンロードすることができます。 

書籍の頭からストーリーとして順に学習するというよりは、解説内容がやや細分化されていますので、基本操作をある程度習得し、疑問点を逆引きしたい方向けと言えるでしょう。また上述した書籍には無かったトラブル解決の章も加わっていますから、ツールスペースが設定・表示されなかったりサーフェスが塗りつぶされてしまったりといったよくあるトラブルをすぐに解決することができます。 

「Civil 3DをBIM/CIMでフル活用するための65の方法」(2020、エクスナレッジ) 
 URL: https://www.amazon.co.jp/dp/4767828082

「AutoCAD Civil 3D 255の技」 

この書籍はタイトルの通り、Civil 3Dを使用する際の操作のヒントとなる技を集めた参考書となっています。教材となるデータをダウンロードして学習することはできないため、むしろ実際にプロジェクトで直面している疑問を逆引きで使用する際におすすめな参考書です。 

内容としては、3次元地形モデルや線形図の作成といった基本的な技に加えて、AutoCADやLandXML、Excelなどとのデータ共有やボーリングデータの読み込みといった、実務で直面しやすい細かな課題に対して解説されています。 

「AutoCAD Civil 3D 255の技」(2021、日経BP) 
 URL: https://www.amazon.co.jp/dp/4296050125

Civil 3Dを使用したBIM/CIM活用事例 

Civil 3Dによる道路線形の検討や土量算出 

図 線形の確認に活用したBIM/CIMモデル
出典:「BIM/CIM事例集ver.1」(国土交通省)

Civil 3Dを用いて3次元モデル上で工事用道路の線形検討を行った事例では、Civil 3Dの土量算出機能を用い、数量算出の効率化に寄与しています。

また3次元モデルを構築したことにより、工事用道路の形状が視覚的に認識・共有しやすくなり、線形検討に関わる時間が約1/4に短縮したと共に、安全対策が必要となる箇所の抽出や施工計画の速やかな立案が可能となりました。 

「BIM/CIM 事例集 ver.1 (CASE.6)」 
 URL :http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimExamplesR1.pdf http://www.nilim.go.jp/lab/qbg/bimcim/bimcimExamplesR1.pdf

 河川・砂防分野におけるCivil 3Dの活用 

道路分野で用いられることが多いCivil 3Dですが、河川・砂防分野でももちろん活用することができます。ある事例では豪雨災害時の被災水位を約1週間で3次元モデルにて解析・検証したことで、3ヶ月かかる測量調査を行いながら同時並行で設計を行うことができ、設計実務や関係機関協議の時間短縮がなされました。実際に測量成果と3次元モデルでの検証結果にはほぼ差異は無く、時間短縮により設計の品質が向上した事例であると言えます。 

建設総合ポータルサイトけんせつPlaza「『見える化』だけがBIM/CIMじゃない」 (一般財団法人経済調査会)
 URL: http://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/26018

シニアも活用するCivil 3D

北海道にある玉川組ではBIM/CIMの推進を以前から進めており、Civil 3Dも導入されています。シニアの技術者が多い職場ですが、3次元モデルを活用して安全管理や施工内容の説明の円滑化を図っており、2次元CADの延長としての操作感で使用できるCivil 3Dは使い勝手が良いようです。同社の多くの技術者がYouTubeなどでの独学で習得しているそうですから、Civil 3Dの操作しやすさがわかります。 

BIM Design 土木・インフラ向け「現場経験40年の技術者が、50歳からCivil 3Dを始めた! シニアパワーがBIM/CIM活用を引っ張る玉川組」(Autodesk, Inc.) 
URL: https://bim-design.com/infra/case/tamagawagumi.html

まとめ 

この記事ではBIM/CIMソフトであるCivil 3Dについて概要やできること、学習方法や活用事例についてご紹介しました。2次元CADであるAutoCADを使用している方は多いでしょうから、そのAutoCADと操作方法が類似していながら3次元モデルを作成できるCivil 3Dは導入・試用しやすいソフトと言えるでしょう。 

実例を見ると、BIM/CIMに求められる役割や機能は、時間軸を含めた施工計画の作成や流域解析、FEMなど非常に多様であり、単一のソフトのみで完結することは非常に稀です。そのためBIM/CIMソフトの手始めとして、基本的な機能が備わっているCivil 3Dを導入した後、求められる役割や機能に応じてInfraWorksやNavisWorks、Revitといったソフト導入を検討することが良いのではないでしょうか。 

参考文献  

1)国土交通省(2021)「BIM/CIM 活用ガイドライン(案) 第1編 共通編 」、国土交通省Webサイト 
  https://www.mlit.go.jp/tec/content/001395762.pdf

2)国土交通省(2021)「土木工事数量算出要領(案)に対応するBIM/CIM モデル作成の手引き(案)」、国土交通省Webサイト 
 https://www.mlit.go.jp/tec/content/001334918.pdf

3) Autodesk, Inc.「Civil 3D」、Autodesk社Webサイト 
 https://www.autodesk.co.jp/products/civil-3d/overview

4) Autodesk, Inc.「AEC Collection」、Autodesk社Webサイト
 https://www.autodesk.co.jp/collections/architecture-engineering-construction/overview

5)一般財団法人経済調査会「『見える化』だけがBIM/CIMじゃない」、建設総合ポータルサイトけんせつPlazaウェブサイト
 URL: https://www.kensetsu-plaza.com/kiji/post/26018 (2021年12月23日 閲覧) 

6) Autodesk, Inc.「現場経験40年の技術者が、50歳からCivil 3Dを始めた!シニアパワーがBIM/CIM活用を引っ張る玉川組」、 「BIM Design 土木・インフラ向け」ウェブサイト
 URL: https://bim-design.com/infra/case/tamagawagumi.html (2021年12月23日 閲覧) 

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