2022年3月31日、2022年度のIT導入補助金の情報が公開されました。
本記事では、建設・土木業界でIT導入補助金の申請を検討されている方に向け、IT導入補助金2022の募集枠の種類や違い、選ぶポイントなどについて解説します。
IT導入補助金とは
IT導入補助金制度は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際にかかる経費の一部を補助してくれる、お得な制度です。
補助対象となるものは?
ソフトウェア購入費やクラウド利用料、導入関連費等
補助対象は、中小・小規模事業者が労働生産性の向上を実現する目的で導入するITツールが対象となります。具体的には、ソフトウェア購入費やクラウド利用料、導入関連費が補助対象となりますが、募集枠の種類によって補助対象となるITツールの種類や要件、対象期間や上限金額等は若干異なります。
2022年度に新設されたデジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)では、さらにハードウェア購入費等も対象となります。
BIM/CIM関連ソフトやシステムについても、要件を満たせば IT導入補助金の対象となり、BIM/CIM導入にかかる数十万円から数百万円の経費を抑えることができます。
IT導入補助金を申請できる対象者
中小企業・小規模事業者等
IT導入補助金の対象者は中小企業および小規模事業者です。対象となる業種は建設業のほか、サービス業や製造業等も対象となります。
建設業の場合、資本金および従業員規模が下記条件のどちらか一方でも満たす場合、申請対象となります。
申請対象となる中小企業・小規模事業者等の条件
(建設業の場合)
下記いずれかの条件を満たすこと
・資本金(資本の額又は出資の総額) :3億円以下
・常勤の従業員:300名以下
そのほか具体的な要件についてはIT補助金2022公式サイトの「補助対象について」を確認してください。
・交付申請時点において、日本国において登録されている個人または法人であり、日本国内で事業を行っていること。
・交付申請の直近月において、申請者が営む事業場内最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること。
「補助対象について」(一般社団法人サービスデザイン推進協議会)より一部抜粋
IT導入補助金の対象となる代表的なBIM/CIMソフト
すべてのITツール(ソフトウェア)が補助対象となるわけではありません。労働生産性向上に資すると認められ、機能要件を満たし、事務局に事前登録されたITツールが対象となります。
そのため、2022年度に補助対象となるBIM/CIM関連ソフトは、IT導入補助金2022ポータルサイトの対象ITツール一覧や各ベンダーのホームページなどで確認しましょう。
ただし、2022年4月18日時点でまだ対象製品の情報が少ないため、本記事ではIT導入補助金2022またはIT導入補助金2021で対象だった、代表的なBIM/CIM関連ソフトを紹介します。
最新情報や詳細については、本記事で更新しますが、各ベンダーのウェブサイトからも確認しましょう。
Autodesk社
2022年4月18日時点では、IT導入補助金2022対象製品についての情報はまだ公開されておりません。
IT導入補助金2021で対象だったオートデスク社のBIM/CIM関連製品は、オートデスク社ホームページの「IT導入補助金2021」ページから確認できます。
IT導入補助金2021(昨年度)での対象製品(一部)
・AutoCAD、Inventor、Revitをはじめとする単体製品
・AEC Collection
(BIM/CIMに必要なソフトをまとめたパッケージ製品。Revit、Civil 3D、Navisworks Manage、InfraWorksなど)
福井コンピュータ株式会社
IT導入補助金2022で対象となる福井コンピュータ社のBIM/CIM関連製品は、福井コンピュータ社ホームページの「IT導入補助金」から確認できます。
IT導入補助金2022での対象製品(一部)
・TREND-POINT (3D点群処理システム)
・TREND-CORE(BIM/CIMコミュニケーションシステム)
・TREND-CORE VR(建設バーチャルリアリティシステム)
・CIMPHONY+(クラウドサービス) など
川田テクノシステム株式会社
IT導入補助金2022で対象となる川田テクノシステム社のBIM/CIM関連製品は、川田テクノシステム社ホームページ「IT導入補助金対象認定について」から確認できます。
IT導入補助金2022での対象製品(一部)
・ V-nasClair(土木系3次元CADシステム)
・ Kitシリーズ(V-nasClair機能拡張システム)
・ Direct R(建設コンサルタント業向けERPパッケージ) など
IT導入補助金の種類とちがい
本章では、IT導入補助金の種類と補助内容の違い、さらに申請するための条件などの違いについて解説します。
2022年度の募集枠の種類
IT導入補助金には「類型」と呼ばれる募集枠のようなものが設定されており、いくつかの種類があります。近年は、毎年実施されている「通常枠(A類型、B類型)」と、時世に合わせて設けられる「特別枠」があります。
2022年度は、「通常枠(A類型、B類型)」に加え、インボイス制度対応として「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型、複数社連携IT導入類型) 」が新設されました。
BIM/CIM導入にIT補助金を活用したい場合、申請類型は「通常枠(A類型またはB類型) 」を選択することになるでしょう。 「デジタル化基盤導入枠」は対象ソフトなどが会計・受発注・決済・EC機能を含むものに限られているため、BIM/CIMソフトは補助対象となりません。
各類型の概要と違いについて具体的にみていきましょう。
通常枠(A類型、B類型)
通常枠A類型とB類型の主な違いは補助額
A類型、B類型の大きな違いは「補助額」です。 A類型は150万円未満、B類型なら最大450万円まで補助金が支給されます。
仮に900万円の補助対象ITツールを導入しようとする場合、 A類型、B類型のどちらも補助率は2分の1ですが、 B類型では補助上限額が450万円ですので、 ITツールの導入経費を半額程度に抑えることができます。
補助対象はソフトウェア費、クラウド利用料など
A類型、B類型の補助対象はともに、ソフトウェア費やオプション、クラウド利用料と導入関連費となっています。クラウド利用料は昨今のITツールがクラウド化していることを踏まえ、2021度から引き続き対象となっており、最大1年分のクラウド利用料が補助されます。
A類型とB類型のどちらか判断するポイントは3つ
通常枠の A類型、B類型のどちらに申請するか、判断材料にすべきポイントは主に3つあります。
A類型かB類型かを判断する3つのポイント
・補助額が150万円以上となるか
・プロセス要件を満たすか
・賃上げ目標の策定を必須とするか
ひとつめは、ITツール導入費用(ソフトウェア費・導入関連費)の補助額です。補助額が150万円未満ならA類型、150万円以上ならB類型を検討しましょう。 ただし、 B類型の場合、要件が厳しくなりますので注意が必要です。その要件が2つめと3つめのポイントとなります。
2つめのポイントは、導入するITツールによって労働生産性の向上や効率化につながるプロセスの数です。申請類型ごとに定められたプロセス要件を満たす必要があります。
ソフトウェアを導入することによって生産性が向上するプロセス数
・A類型:1種類以上 (汎用プロセスのみは不可)
・B類型:4種類以上
プロセスの種類は、下図のとおり分類されています。
業種固有プロセスは「ITツール登録の手引き」に記載されています。「建設・土木業」の業種では、下図の機能を備えるソフトが業種固有プロセス(建設・土木業)に該当するため、ソフトが ITツールとして登録されていれば補助対象となります。
業種固有プロセスに該当するITツールを申請する場合、申請類型は通常枠(A類型、B類型)で、プロセスは「業務特化型プロセス」を選択します。
3つめのポイントは、賃上げ目標の策定です。 A類型では、賃上げ目標の策定は加点要素として評価されますが、 B類型では必須条件となりますので、注意しましょう。
補助金申請(通常枠)における「賃上げ目標の策定」に対する扱い、評価
・A類型:加点要素
・B類型:必須項目
デジタル化基盤導入枠の概要
つぎに、2022年度に新設された「デジタル化基盤導入枠」の概要を確認しましょう。「デジタル化基盤導入枠」は、インボイス制度を見据えたデジタル化推進や複数の中小・小規模事業者が連携した地域でのDX化等を目指すために追加された、新しい募集枠です。
「デジタル化基盤導入枠」には「デジタル化基盤導入類型」と「複数社連携IT導入類型」があり、それぞれの目的は企業間取引のデジタル化推進、複数の中小・小規模事業者が連携した地域DX促進となっています。
デジタル化基盤導入類型
「デジタル化基盤導入類型」は、小企業・小規模事業者等の導入する会計・受発注・決済・ECソフトの経費の一部を補助することで、インボイス対応も見据えた企業間取引のデジタル化を推進することを目的としています。
通常枠より高い補助率
補助率は、補助申請額が「5万円以上50万円以下」では4分の3以内、「50万円超、350万円以内」では3分の2となっています。
補助対象は会計、受発注、決済、EC機能含むソフトのみ
デジタル化基盤導入類型の申請では、通常枠のようなプロセス数の要件はありませんが、対象となるソフトが限られています。デジタル化基盤導入類型で申請するソフトはすべて、会計・受発注・決済・ECのいずれか1つ以上の機能を含んでいる必要があります。例えば、会計・受発注・決済・EC機能を含むソフトと、それ以外のソフトを組み合わせて申請することはできません。
対象となるソフトの例
・会計ソフト
・決済代行システム(個人向け、法人向け)
・ECサイト構築サービス
・受発注管理システム
クラウド利用料は最大2年分、ハードウェア購入費用も対象
補助対象ソフトは限られているものの、デジタル化基盤導入類型ではクラウド利用料が最大で2年間分補助されるうえ、ハードウェア購入費用も補助対象となっています。
2021度は類似の募集枠でハードウェアのレンタル費用のみが対象でしたが、2022年度はハードウェア購入費用が対象となり、 PCやタブレットは補助上限額10万円で支援を受けることができます。
複数社連携IT導入類型
「複数社連携IT導入類型」は、複数の中小・小規模事業者が連携してITツールやハードウェアを導入する取り組みを支援するもので、商店街単位や複数の中小企業がまとまって申請することができます。
組織を超えた複数の事業者でまとまって申請可能
組織の枠組みを超え、複数の事業者がまとまって申請できる類型のため、例えば下記のような団体や集まりが「複数社連携IT導入類型」の補助対象として申請できます。
「複数社連携IT導入類型」の補助対象事業者
引用:IT導入補助金2022 公式サイト「デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)」(一般社団法人サービスデザイン推進協議会)
・商工団体等
(例)商店街振興組合、商工会議所、商工会、事業協同組合 等
・当該地域のまちづくり、商業活性化、観光振興等の事業に担い手として取り組むことができる中小企業者又は団体
(例)まちづくり会社、観光地域づくり法人(DMO) 等
・複数の中小企業・小規模事業者により形成されるコンソーシアム
補助上限額は3,000万円
補助上限額は他の応募枠よりも多い3,000万円となっています。複数事業者でのITツール導入を目的としているため、補助上限額が高く設定されているだけでなく、それぞれのツールを連携するための専門家コーディネート費用、取り組みへの助言を行う外部専門家への謝金についても、対象経費とすることができます。
IT導入補助金の申請の流れ
公募スケジュール
IT導入補助金は、年に複数回の期間が設定されています。補助金の交付決定は、締め切り日からおよそ1ヶ月かかります。
交付決定の連絡が届く前に発注・契約・支払い等を行った場合、補助金の交付を受けることができませんので、注意しましょう。スケジュールを確認し、早めにITツールの選定や導入時期の検討を行うなど、計画的な申請の準備が大切です。
IT導入補助金の交付申請スケジュール
2022年4月18日時点での公開分のみ
通常枠(A・B類型)
最新のスケジュール情報はこちら・第1回受付締め切り:2022年5月16日17:00(予定)(交付決定日:2022年6月16日)
・第2回受付締め切り:2022年6月13日17:00(予定)(交付決定日:後日案内予定)
デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
最新のスケジュール情報はこちら・第1回受付締め切り:2022年4月20日17:00(予定)(交付決定日:2022年5月27日)
・第2回受付締め切り:2022年5月16日17:00(予定)(交付決定日:2022年6月16日)
・第3回受付締め切り:2022年5月30日17:00(予定)(交付決定日:2022年6月30日)
・第4回受付締め切り:2022年6月13日17:00(予定)(交付決定日:後日案内予定)
デジタル化基盤導入枠(複数社連携IT導入類型)
最新のスケジュール情報はこちら・後日案内予定
引用:IT導入補助金2022公式サイト「スケジュール」(一般社団法人サービスデザイン推進協議会)
まとめ
本記事では、中小企業のBIM/CIM導入に活かしたい、2022年度のIT導入補助金の概要について解説しました。 建設・土木分野では、通常枠(A類型、B類型)での申請により、BIM/CIMや点群データ解析といった建設DX関連のソフトが補助対象となります。ぜひこの機会にIT導入補助金を活用し、建設DX化に向けて社内環境整備を進めましょう。
参考
一般社団法人サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金2022」、IT導入補助金2022公式サイト
https://www.it-hojo.jp/(2022年4月5日 閲覧)
サービス等生産性向上IT導入支援事業事務局「ITツール登録の手引き」、IT導入補助金2022公式サイト
it-hojo.jp/r03/doc/pdf/r3_apply_example.pdf(2022年4月5日 閲覧)