■はじめに
2023年3月に、国土交通省は「直轄土木業務・工事におけるBIM/CIM適用に関する実施方針」を発表しました。
「直轄土木業務・工事におけるBIM/CIM適用に関する実施方針の解説」(国土交通省)によると、原則としてBIM/CIMの適用は直轄土木業務・工事の全てを対象としています。
ただし、小規模なものとして維持工事を除き、単独の機械設備工事・電気通信設備工事も含みません。
※BIM/CIM を適用土木工事との取り合い箇所に関わる機械設備工事・電気通信設備工事は含みます
本記事ではBIM/CIM適用の目的やメリットなどの概要を踏まえた上で、3次元モデルの活用における義務項目と推奨項目とDS(Data-Sharing)の実施について紹介します。
(ガイドラインの集約と整理は今後予定しているとのことで、最新情報などは改めて紹介していきたいと思います)
■BIM/CIM適用の目的
建設事業全体における建設生産・管理システムの効率化を図る手段として、国土交通省はBIM/CIMの原則適用を掲げています。
調査・測量→設計→工事→維持・管理における主な活用方法は下図の通りで、具体的な事例とメリットは後述いたします。
BIM/CIM関連基準要領等(令和5年3月)出典:「BIM/CIM原則適用に係る参考資料(R5.3)」(国土交通省)
BIM/CIM原則適用に関する3つのポイント
BIM/CIM原則適用の実施にあたり、以下の3つのポイントについて紹介します。
- 3次元モデルの活用(義務項目)
- 3次元モデルの活用(推奨項目)
- DS(Data-Sharing)の実施(発注者によるデータ共有)
●3次元モデルの活用(義務項目)
3次元モデルの活用における義務項目とは、業務(工事)の発注者が活用目的を決め、受注者が3次元モデルを作成して活用していくことを義務付けたものです。
詳細設計~施工時で活用するにあたり、下図のような例があります。
BIM/CIM関連基準要領等(令和5年3月)出典:「BIM/CIM原則適用に係る参考資料(R5.3)」(国土交通省)
「視覚化による効果」では、必要な部分を3次元モデルにするにあたり寸法や大きさの精度が求められ、活用目的以外の箇所の作成は問われません。
水門と周辺の土工だけを作成したり、ランプ橋は精度を高くしつつ周辺モデルは簡略的に作成したりといった例もあるでしょう。
将来的には3次元モデルの全面活用を目指していますが、当面は2次元図面を使用して3次元モデルを作成し、モデルは参考資料として取り扱う程度となっています。
●3次元モデルの活用(推奨項目)
推奨項目は、「視覚化による効果」の他、「3次元モデルによる解析」、「省力化・省人化」といった高度な内容を含む活用目的が挙げられます。
概略・予備設計~詳細設計~施工時で活用するにあたり、下図のような例があります。
BIM/CIM関連基準要領等(令和5年3月)出典:「BIM/CIM原則適用に係る参考資料(R5.3)」(国土交通省)
一定規模・難易度の事業において、発注者が明確にした活用目的に基づき、受注者が1つ以上の項目に取り組むことを目指しているのが現状です。
また、該当しない業務・工事であっても積極的な活用を推奨しています。
●DS(Data-Sharing)の実施(発注者によるデータ共有)
DS(Data-Sharing)とは、発注者が受注者にデータを共有するにあたり「電子納品保管管理システム」の利用などを推奨するという旨が掲げられています。
つまり、発注者が受注者に設計図書に関する下図のような情報(電子データを含む参考資料)を速やかに渡すためには、「電子納品保管管理システム」の利用が推奨されるということです。
BIM/CIM関連基準要領等(令和5年3月)出典:「BIM/CIM原則適用に係る参考資料(R5.3)」(国土交通省)
これまではデータをCDなどを使って受け渡すことが多かったですが、インターネットを介して受け渡しにすることで以下のようなメリットがあります。
- 資料検索の効率化、受け渡しの手間や時間の削減
- 成果品の検索が可能(成果品活用がしやすくなる)
最新の情報を明確にし、データ共有をスムーズに行うことで成果品活用の漏れを防ぎます。
■まとめ
本記事では令和5年3月に発表された「BIM/CIM適用に関する実施方針」の概要や、義務項目などのポイントを解説しました。
その他、BIM/CIM関連基準・要領等についての詳細は、BIM/CIM関連基準要領等(国土交通省)も確認するのがおすすめです。
※令和5年度にガイドラインの集約と整理を予定しているとのことで、最新情報などは改めて紹介していきたいと思います
参考文献
1)国土交通省「BIM/CIM関連基準要領等(令和5年3月)」、国土交通省ウェブサイト
https://www.mlit.go.jp/tec/tec_fr_000115.html (2023年5月1日 閲覧)